住居確保給付金はいくら?支給額の決まり方と、申請の流れ・求職活動の要件
仕事を失ったとき、あるいは収入が大きく減ったとき、いちばん先に守るべきものは住まいです。住所を失うと、就職の応募も、銀行口座も、行政の手続きも、ほぼすべてが詰まります。そのために国が用意しているのが住居確保給付金です。
ところがこの制度、名前は聞いたことがあっても「いくら出るのか」「自分が対象なのか」がはっきり分からないまま、家賃を滞納してから思い出す人が多い。この記事では、厚生労働省の資料をもとに支給額の決まり方・対象要件・求職活動の条件・申請の流れを、判断できる粒度で整理します。
住居確保給付金とは何か
住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法にもとづく常設の制度です。コロナ禍の臨時措置というイメージを持つ人がいますが、あのとき要件が一時的に緩和されただけで、制度そのものは今も動いています。
目的は名前のとおり「住まいの確保」。仕事を辞めたことなどで収入が減り、家賃の支払いに困っている人に対して、再就職に向けた活動を行うことなどを条件に、家賃額を補助するものです。
現在は2つのメニューがあります。
| メニュー | 中身 | こんな人向け |
|---|---|---|
| 家賃の補助 | 家賃額(上限あり)を原則3か月、最長9か月支給 | 今の家に住み続けながら、再就職までをしのぎたい人 |
| 転居費用の補助 | 家賃の安い住宅に移るための転居費用を補助 | 収入が大きく減り、今の家賃水準では立て直せない人 |
「転居費用の補助」は2025年4月に加わった新しいメニューです。配偶者が亡くなって世帯収入が減った、病気で離職して収入を増やせない——といったケースで、家計を根本から作り直すための引っ越しを支える設計になっています。転居先の家賃が多少上がっても、通院先が近くなって交通費が下がるなど家計全体で改善すると認められれば対象になり得る点は、意外と知られていません。
いくらもらえるのか:支給額の決まり方
ここが一番知りたいところだと思いますが、「全国一律で月◯円」という制度ではありません。次の3段階で決まります。
STEP1:実際の家賃額が出発点
まず、あなたが今払っている家賃額が基準になります。上乗せはありません。
STEP2:自治体ごとの上限額で頭打ちになる
ただし各自治体に支給の上限額があり、家賃がそれを超える場合は上限額までしか出ません。この上限額は生活保護の住宅扶助額を基準に、自治体と世帯人数ごとに決められています。都市部ほど高く、世帯人数が多いほど高くなります。
STEP3:収入に応じて差し引かれる
さらに、世帯の収入が基準額(市町村民税の均等割が非課税となる額の12分の1)を超えている場合、超えた分が支給額から差し引かれます。つまり収入がゼロに近いほど満額に近づき、収入があるほど減っていく設計です。在職中でも使える一方、収入が一定を超えると1円も出ないことがあるのはこのためです。
そして支払われ方にも特徴があります。原則として、自治体が大家や管理会社の口座に直接振り込みます。自分の手元に現金が入るわけではないので、「生活費の足しにする」ことはできません。あくまで住まいを守るための制度です。
対象になるのはどんな人か
要件は「入口の条件」と「お金の条件」の2層に分かれています。
入口の条件:①か②のどちらか
- ①仕事を辞めてから、または事業を廃止してから2年以内
- ②自分の責任や都合ではない理由で休業などになり、収入が①と同程度まで減った
②があることが重要です。離職していなくても、勤務先の都合でシフトが激減した、廃業に近い状態で自営業の売上が落ちた、といったケースは対象になり得ます。「まだ辞めていないから無理だろう」と自己判断で諦める必要はありません。
お金の条件:収入と資産の両方
| 条件 | 基準 |
|---|---|
| 収入 | 直近の月の世帯収入合計が、基準額+家賃額(上限あり)より少ないこと。基準額は市町村民税の均等割が非課税となる額の12分の1 |
| 資産 | 世帯の預貯金・手持ち金の合計が、基準額の6倍以下。ただしその額が100万円を超える場合は100万円が上限 |
資産要件を見ると分かるとおり、この制度は貯金を使い切る前に相談したほうが有利です。「もう少し粘ってから」と貯金を減らしても、要件が良くなるわけではありません。むしろ求職活動をする体力と時間が削られていきます。生活防衛資金の考え方は月1,000円の積立の記事にも書きましたが、平時の備えと非常時の制度は、両方知っていて初めて機能します。
求職活動の要件
住居確保給付金は「もらって終わり」の給付ではなく、再就職に向けた活動とセットの制度です。受給中は、次のような活動が求められます。
- 自立相談支援機関の面接等:月4回以上
- ハローワークへの求職申込みと職業相談:職業相談は月2回以上
- 企業等への応募・面接:週1回以上
回数だけ見ると重く感じますが、これは「就職活動を生活の中心に置ける状態を作る」ための条件でもあります。家賃の心配をしながら日雇いで日銭を追う状態では、この頻度の求職活動はまず不可能です。順番が逆で、住まいが安定するからこの活動ができると考えてください。
申請の流れと必要なもの
申請先を間違えると時間を失います。入口は福祉事務所でもハローワークでもなく、「自立相談支援機関」です。
STEP1:自立相談支援機関に相談する
お住まいの市区町村の自立相談支援機関が窓口です。名称は自治体によって「くらしサポートセンター」「自立相談支援センター」などさまざまですが、全国の自立相談支援機関の一覧から探せます。「(自治体名) 生活困窮 相談」で検索しても届きます。
STEP2:要件の確認と申請書類の準備
収入・資産の確認があるため、次のようなものを求められるのが一般的です。相談の時点ですべて揃っている必要はありません。
- 本人確認書類
- 離職や収入減が分かる書類(離職票、シフト表、売上が分かる資料など)
- 直近の収入が分かる書類(給与明細など)
- 世帯全員の預貯金通帳
- 賃貸借契約書
STEP3:決定後、大家の口座へ振込が始まる
支給が決まると、自治体から大家や管理会社の口座へ家賃が振り込まれます。受給中は求職活動の状況を報告し、延長を希望する場合は改めて要件の確認を受けます。
つまずきやすい注意点
- 在職中・自営業でも対象になり得る
- 離職から2年以内なら、時間が経っていても間に合う
- 家賃が高すぎる場合は転居費用の補助という選択肢がある
- 失業保険など他の制度と組み合わせて考えられる
もう1つ。住居確保給付金は生活保護の手前にある制度です。「生活保護はまだ抵抗がある」という段階で使えるものが用意されている、という位置づけを知っておくと、相談へのハードルが下がります。逆に言えば、ここで止められなかったときに次の受け皿があるということでもあります。
よくある質問
Q. 住居確保給付金はいくらもらえますか?
A. 実際の家賃額が支給されますが、自治体ごとの上限額で頭打ちになります。上限額は生活保護の住宅扶助額を基準に、自治体と世帯人数で決まります。さらに世帯収入が基準額を超える場合は、その分が差し引かれます。
Q. いつまで受けられますか?
A. 原則3か月間です。要件を満たせば延長が2回まで認められ、最長9か月間になります。
Q. 働いていても使えますか?
A. 使える場合があります。離職・廃業から2年以内の人に加え、自分の責任や都合によらない理由で休業などになり収入が減った人も対象です。在職中でも収入・資産の要件を満たせば申請できます。
Q. 給付金は自分の口座に振り込まれますか?
A. 原則として自治体が住宅の貸主等の口座へ直接振り込みます。生活費として自由に使えるお金ではありません。
Q. 貯金がいくらまでなら対象ですか?
A. 世帯の預貯金・手持ち金の合計が基準額の6倍以下、ただしその額が100万円を超える場合は100万円が上限です。基準額は自治体によって異なるため、具体的な金額は窓口で確認してください。
Q. 失業保険をもらっていても申請できますか?
A. 失業保険(雇用保険の基本手当)は収入として扱われるため、その額を含めて収入要件を判定します。受給していること自体が申請の妨げになるわけではないので、窓口で両方の状況を伝えてください。
まとめ
住居確保給付金の要点は4つです。①支給額は「実際の家賃額」を自治体の上限額と収入で調整して決まる、②離職・廃業から2年以内、または自分の都合によらない収入減が入口の条件、③受給中は月4回の面接・月2回の職業相談・週1回の応募が求められる、④窓口は自立相談支援機関。
そして一番大事なのは、使うタイミングです。この制度は家を失った人を救い戻すものではなく、失う手前で踏みとどまるためのもの。家賃が払えなくなりそうだと気づいた時点、貯金がまだ残っている時点で相談したほうが、選べる道は明らかに多くなります。
「制度の名前を知っているかどうかで人生が変わる」という話を、映画「東京難民」の記事でも書きました。この記事はその具体版です。いま困っていなくても、「家賃が払えなくなったら住居確保給付金」という1行だけ覚えて帰ってください。
※本記事は制度の一般的な解説です。基準額・上限額・運用は自治体によって異なり、改正されることもあります。最新かつ正確な内容は、お住まいの自治体の自立相談支援機関および厚生労働省の公式情報をご確認ください。