国民健康保険料はどう決まる? | 均等割・所得割の仕組みと、子どもの軽減が高校生年代まで広がる2027年4月改正
会社を辞めて国民健康保険に切り替えた人が、最初に驚くのがこれです。国保の保険料は、収入のない子どもにも1人分かかります。会社員の健康保険は扶養家族が何人いても保険料が変わらないので、同じ「健康保険」という名前でも、家族が増えたときの挙動が真逆になります。
この「人数でかかる部分」を均等割といいます。子育て世帯の負担が重くなりすぎないよう軽減措置が用意されていて、2027年4月からはその対象が高校生年代まで広がります。この記事では、保険料がどう決まるのかという土台から、軽減の重ね方までを厚生労働省の資料で整理します。
国保料は「世帯」にかかる
国民健康保険は、自営業・フリーランス・無職の人、退職して会社の健康保険を抜けた人などが加入します。保険料は個人ではなく世帯単位で計算され、世帯主あてに請求が届きます。世帯主本人が国保に入っていなくても(会社員で健保に入っている等)、世帯の中に国保加入者がいれば世帯主が納付義務者になります。
| 項目 | 会社員の健康保険 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 保険料の単位 | 本人の給与 | 世帯 |
| 家族が増えたとき | 扶養に入れば保険料は変わらない | 人数分の均等割が増える |
| 会社の負担 | 労使折半(半分は会社) | なし(全額自己負担) |
| 「扶養」という考え方 | ある | ない(全員が被保険者) |
計算式:3つの区分 × 2つの割り方
国保料は、次の3つの区分に分かれています。区分ごとに別々の料率が設定され、最後に合算されます。
- 医療給付費分 — 加入者全員にかかる、医療費のための部分
- 後期高齢者支援金分 — 加入者全員にかかる、後期高齢者医療制度を支えるための部分
- 介護納付金分 — 40歳〜64歳の加入者だけにかかる部分
そして各区分の中が、さらに2つ(自治体によっては3つ)の計算方法に分かれます。
| 割り方 | 何に応じてかかるか | 子どもにかかるか |
|---|---|---|
| 所得割 | 前年の所得 | 所得がなければかからない |
| 均等割 | 加入者の人数(頭数) | かかる |
| 平等割 | 1世帯あたり定額 (採用しない自治体もある) | —(世帯単位) |
均等割が子育て世帯に効く理由
均等割は頭数にかかります。生まれたばかりの赤ちゃんも1人分です。所得割は所得ゼロなら0円ですが、均等割は0円になりません。
つまり子どもが増えるほど、収入が1円も増えていないのに保険料だけが上がるという構造になっています。会社員の健康保険では起きないことなので、独立・退職して国保に移った子育て世帯ほど、この差に強く当たります。
この構造への手当てとして用意されているのが、次に見る2種類の軽減です。
所得が低い世帯の軽減:7割・5割・2割
1つめは、世帯の所得に応じた軽減です。世帯の所得が一定以下なら、均等割と平等割が7割・5割・2割のいずれかで軽減されます(所得割は元々所得に比例するので、この軽減の対象外です)。
判定に使うのは世帯主と国保加入者全員の所得で、判定基準額は毎年改定されます。ここで注意が必要なのは次の点です。
子どもの5割軽減と、軽減の重ね方
2つめが、子どもを対象にした軽減です。厚生労働省の資料には、こう書かれています。
令和4年4月から、未就学児に係る均等割保険料について、その5割を公費(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)により軽減する措置を講じている
対象は未就学児の医療給付費分・後期高齢者支援金分の均等割です。所得制限はなく、申請も不要で、高収入世帯の子どもにも適用されます。
そして重要なのが、この5割軽減は先ほどの7割・5割・2割軽減の「後」にかかるという点です。二重に効きます。
| 世帯の所得による軽減 | 残る均等割 | そこから子どもの5割軽減 | 合計の軽減率 |
|---|---|---|---|
| 7割軽減 | 3割 | 3割 × 50% = 1.5割 | 8.5割 |
| 5割軽減 | 5割 | 5割 × 50% = 2.5割 | 7.5割 |
| 2割軽減 | 8割 | 8割 × 50% = 4割 | 6割 |
| 軽減なし | 10割 | 10割 × 50% = 5割 | 5割 |
7割軽減の世帯の子どもは、合わせて8.5割軽減——均等割の1.5割しか払いません。「7割軽減だから子どもも7割だろう」と思っている人が多いのですが、実際にはもう一段下がります。
目盛りは軽減前の均等割を10割としたときの割合です。金額ではなく比率なので、どの自治体でも同じように当てはまります。
2027年4月:高校生年代まで拡大
2026年5月29日に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)で、この5割軽減の対象が広がることが決まりました。厚生労働省の資料には「子育て世帯の更なる負担軽減のため、5割の軽減措置の対象を高校生年代まで拡充する」と書かれています。
つまり、いま未就学児だけに適用されている5割軽減が、小学生・中学生・高校生年代にも適用されるということです。軽減の重ね方(8.5割・7.5割・6割・5割)はそのまま、対象年齢だけが広がる形です。
| 現行(2022年4月〜) | 2027年4月〜 | |
|---|---|---|
| 対象 | 未就学児 | 高校生年代まで (18歳になった後、最初の3月31日まで) |
| 軽減率 | 均等割の5割 | 均等割の5割(変更なし) |
| 対象の区分 | 医療給付費分・後期高齢者支援金分 | 同じ |
| 所得制限 | なし | なし |
| 軽減対象者数 | 約50万人 | 約180万人 |
施行日は2027年4月1日です。今回の法改正には施行日がばらばらの項目が並んでいますが(高額療養費の考慮事項の明確化は2026年8月1日、妊娠・出産の支援強化は公布後2年以内)、この項目は日付が確定しています。
財源は現行と同じく公費で、国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担します。国保加入者の保険料に上乗せして捻出するわけではありません。
手続きと、確認しておくこと
- 子どもの軽減に申請は不要です。自治体が住民基本台帳で年齢を把握して自動適用します。2027年4月の拡大でも、こちらから何かする必要はありません。
- 所得の申告だけは必ずしてください。7割・5割・2割軽減は所得の判定が前提です。収入がなくても住民税の申告をしていないと軽減されません。
- 納入通知書の「均等割」の行を見てください。毎年6月ごろに届く通知書に、医療分・後期支援金分・介護分それぞれの所得割と均等割が分けて書かれています。子どもの軽減が効いているかは、この均等割の額で確認できます。
- 退職直後は軽減の対象になりやすいです。国保料は前年の所得で決まるため、退職1年目は保険料が高く出ますが、翌年は所得が下がって軽減に該当することがあります。会社都合の離職なら保険料を大きく下げる別の制度(非自発的失業者の軽減)もあるので、失業保険の手続きと一緒に窓口で確認してください。
よくある質問
Q. 国民健康保険料は子どもにもかかりますか?
A. かかります。均等割は加入者の人数に応じてかかるため、収入のない赤ちゃんにも1人分が課されます。会社員の健康保険は扶養家族が何人いても保険料が変わらないので、ここが最も大きな違いです。
Q. 子どもの均等割が軽減される制度はありますか?
A. 2022年4月から、未就学児の均等割(医療給付費分・後期高齢者支援金分)が5割軽減されています。所得制限はなく、申請も不要です。2027年4月からは対象が高校生年代まで広がります。
Q. 低所得世帯の軽減と子どもの軽減は両方使えますか?
A. 両方使えます。まず世帯の所得に応じた7割・5割・2割軽減が適用され、その軽減後の均等割額をさらに5割軽減します。7割軽減の世帯なら合わせて8.5割の軽減になります。
Q. 2027年4月の改正で何が変わりますか?
A. 子どもの均等割5割軽減の対象が、未就学児から高校生年代まで広がります。厚生労働省の資料では軽減対象者はおよそ50万人から180万人へ増える見込みとされています。施行日は2027年4月1日です。
Q. 均等割の軽減に申請は必要ですか?
A. 子どもの軽減に申請は不要です。ただし7割・5割・2割軽減は、世帯全員が住民税の申告を済ませていることが前提になります。所得がなくても申告は必要です。
Q. 保険料の金額は全国どこでも同じですか?
A. 違います。料率も均等割の額も市区町村ごとに決められているため、同じ年収・同じ家族構成でも自治体が変わると保険料は変わります。この記事の「軽減の割合」は全国共通ですが、金額はお住まいの自治体で確認してください。
まとめ
国保料は所得割+均等割で決まり、均等割は頭数でかかる——ここが会社員の健康保険との決定的な違いです。子どもが増えれば、収入が変わらなくても保険料は上がります。
その手当てとして、未就学児の均等割には5割の軽減があり、低所得世帯の軽減と重なると最大8.5割まで下がります。そして2027年4月から、この軽減が高校生年代まで広がります。
やることは1つだけです。所得がゼロでも住民税の申告をしておくこと。子どもの軽減は自動ですが、所得による軽減は申告がないと判定されません。ここを空けたままにしていると、受けられるはずの軽減が丸ごと消えます。
医療費そのものの上限については高額療養費制度を、給与から引かれる社会保険料の全体像は給与明細の見方をどうぞ。
※本記事は一般的な制度解説です。料率・均等割額・軽減の判定基準は自治体ごとに異なり、毎年改定されます。最新の情報は厚生労働省およびお住まいの市区町村でご確認ください。