年金の仕組み|「もらえないかも」の前に知る受給額の計算方法
「どうせ自分たちの世代はもらえない」——飲み会で必ず出るこの話、自分の見込額を確認したことがある人がどれだけいるでしょうか。年金は感情論で語られがちですが、仕組みと計算式は公開されており、自分の見込額は今日スマホで確認できます。
この記事では、日本年金機構と厚生労働省の一次情報をもとに、①2階建ての構造、②受給額の計算方法、③「もらえない」論の検証、④今日できる確認方法、の順で解説します。
年金は2階建て:国民年金と厚生年金
日本の公的年金は2階建て構造です(出典:日本年金機構:公的年金制度の種類と加入する制度)。
| 加入者 | 保険料 | もらえる年金 | |
|---|---|---|---|
| 1階:国民年金(基礎年金) | 20〜60歳の全員 | 定額(月1.7万円台) | 老齢基礎年金 |
| 2階:厚生年金 | 会社員・公務員 | 給与の18.3%を労使折半 | 老齢厚生年金(基礎年金に上乗せ) |
会社員は2階建て(基礎+厚生)、自営業・フリーランスは1階のみです。給与明細の「厚生年金保険料」には国民年金分も含まれているため、会社員が別途国民年金保険料を払う必要はありません。また、公的年金は老後だけでなく、障害年金・遺族年金という「保険」の機能も持っています。「払い損」の議論でこの保険機能が忘れられがちです。
1階(国民年金)の計算:満額×納付月数/480
老齢基礎年金の計算はシンプルです。
※満額は毎年度改定されます。40年(480か月)納めれば満額、20年なら半分です。
満額でも月6.9万円前後——これが1階部分の水準です(最新の額は日本年金機構:老齢基礎年金の受給要件・年金額を参照)。受給には保険料納付済期間等が10年以上必要です。学生時代の猶予期間や免除期間の扱いで満額から減っている人も多く、追納(10年以内)で満額に近づけることができます。
2階(厚生年金)の計算:平均年収×加入年数に比例
会社員の上乗せ部分(報酬比例部分)は、現役時代の給与と加入期間に比例します。
※2003年4月以降の期間の式。賞与も計算に含まれます。
ざっくりした概算をすると、「平均年収 × 加入年数 × 0.55%」が年額の目安です。例えば平均年収500万円で40年働くと、500万 × 40 × 0.0055 ≒ 年110万円。基礎年金の約83万円と合わせて年193万円、月16万円程度というイメージになります。
この式から分かる実務的なポイントは2つです。
- 年収が上がれば年金も増える(ただし標準報酬月額には上限があります)
- 働く年数が延びれば年金も増える。60歳以降も厚生年金に加入して働けば、その分が上乗せされます
さらに、受給開始は原則65歳ですが、66〜75歳への繰下げで1か月あたり0.7%(最大84%)増額、60〜64歳への繰上げで1か月あたり0.4%減額という調整も選べます(出典:日本年金機構:年金の繰下げ受給)。
「もらえないかも」の検証:ゼロにはならないが目減りはする
結論を先に言うと、「支給ゼロになる」は現実的でなく、「今の水準より目減りする」は公式に予告されている——これが一次情報から言えることです。
- ゼロにならない理由:公的年金は現役世代の保険料でその時々の高齢者を支える賦課方式で、基礎年金の給付費の2分の1は国庫負担(税金)、さらに200兆円規模の積立金(GPIFが運用)がバッファとして存在します。現役世代と税収が存在する限り、制度が丸ごと消える構造にはなっていません。
- 目減りする理由:少子高齢化に合わせて給付水準を自動調整するマクロ経済スライドが組み込まれており、現役世代の手取りに対する年金額の比率(所得代替率)は長期的に低下する見通しです。厚生労働省は5年ごとの財政検証で複数シナリオの見通しを公表しています。
今日できる確認:ねんきん定期便とねんきんネット
自分の数字を確認する手段は公式に3つ用意されています。
- ねんきん定期便:毎年誕生月にハガキで届きます。50歳未満は「これまでの実績に応じた額」、50歳以上は「このまま働いた場合の見込額」が載ります。50歳未満の人は額の小ささに驚きますが、将来の加入分が含まれていない数字なので悲観する必要はありません。
- ねんきんネット:マイナポータル連携で、納付記録の確認と詳細な見込額試算ができます。転職歴がある人は記録の漏れ(未統合の記録)がないかもここで確認できます。
- 公的年金シミュレーター(厚労省):ねんきん定期便のQRコードを読み込むと、働き方や受給開始年齢を変えた場合の試算がスライダー操作でできます。
よくある質問
Q. 年金は本当にもらえなくなりますか?
A. 支給ゼロは現実的ではありませんが、マクロ経済スライドにより給付水準が目減りしていくことは公式に示されています。「ゼロか満額か」ではなく「いくらに目減りするか」で考え、不足分をNISA・iDeCo等で補うのが合理的です。
Q. 自分の見込額はどこで見られますか?
A. 誕生月に届くねんきん定期便と、ねんきんネット・公的年金シミュレーターで確認できます。50歳未満の定期便の額は将来の加入分を含まない点に注意してください。
Q. 保険料が払えないときはどうすればいいですか?
A. 未納のまま放置せず、免除・納付猶予(学生は学生納付特例)を申請してください。受給資格期間に算入され、障害・遺族年金の保障も守られます。余裕ができたら10年以内なら追納できます。
まとめ
年金は「基礎年金=満額×納付月数/480」「厚生年金≒平均年収×加入年数×0.55%」というシンプルな構造で、自分の見込額はねんきんネットで今日確認できます。「もらえないかも」と不安がる前に数字を見る——これがこのサイトの流儀です。
見込額を確認して「足りない」と感じたら、その差額を埋める手段がNISAとiDeCoです。国が用意した非課税制度から検討するのが順番として合理的です。
※本記事は一般的な制度解説です。年金額・保険料は毎年度改定されます。個別の受給見込みは日本年金機構・年金事務所でご確認ください。