複利の仕組み|「72の法則」と、味方につける人・敵に回す人の違い
「複利は人類最大の発明」——アインシュタインが言ったとされる有名な言葉です(真偽は諸説あります)。出所はともかく、中身は本物です。複利は、資産運用では最強の味方になり、リボ払いやキャッシングでは最悪の敵になる、同じ1つの数学だからです。
この記事では、単利と複利の違い、2倍になる年数が暗算できる「72の法則」、積立でいくらになるかの計算を解説します。数式が苦手でも大丈夫です。使うのは掛け算と割り算だけです。
単利と複利の違い:「利息に利息が付く」だけ
定義は1行ずつで済みます。
- 単利:利息が付くのは元本だけ。利息は毎年同じ額。
- 複利:利息が付くのは元本+これまでの利息。利息が利息を生む。
100万円を年5%で運用した場合を比べます。
| 経過年数 | 単利 | 複利(年1回) | 差 |
|---|---|---|---|
| 10年 | 150万円 | 約163万円 | 13万円 |
| 20年 | 200万円 | 約265万円 | 65万円 |
| 30年 | 250万円 | 約432万円 | 182万円 |
最初の10年の差は13万円ですが、30年では182万円。複利の効果は時間に比例ではなく加速度的に効く——これがグラフにすると「後半で急カーブを描く」理由で、「早く始めるほど有利」と言われる根拠も、この後半の加速を長く享受できるからです。
72の法則:2倍になる年数を暗算する
複利計算は本来べき乗の計算ですが、実用上は暗算用の近似式で十分です。
年1% → 約72年 / 年3% → 約24年 / 年4% → 約18年 / 年6% → 約12年 / 年8% → 約9年
この法則が便利なのは、金融商品の宣伝を即座に検算できることです。「10年で2倍になります」と言われたら、72÷10=年7.2%の利回りが毎年続く前提だと分かります。それが現実的な数字か(そしてどんなリスクを取る商品か)を考える物差しになります。普通預金の年0.2%なら2倍まで360年——「預金だけではお金は実質増えない」も、この法則で数字として体感できます。
積立×複利の計算:月3万円×30年の現実的な数字
実際の資産形成は一括ではなく積立が中心です。月3万円を積み立てた場合の30年後を、想定利回り別に見てみます(年1回複利・概算)。
| 想定利回り(年) | 元本(30年) | 30年後の評価額 | 運用益 |
|---|---|---|---|
| 0%(貯金のみ) | 1,080万円 | 1,080万円 | 0円 |
| 3% | 1,080万円 | 約1,748万円 | 約668万円 |
| 5% | 1,080万円 | 約2,497万円 | 約1,417万円 |
年5%なら、運用益が元本を上回ります。この試算は金融庁のつみたてシミュレーターで誰でも無料で再現できます。金融機関の営業トークではなく、公的ツールで自分の数字を確かめるのがこのサイトの推奨する順番です。
なお、運用益には通常約20%の税金がかかりますが、これを非課税にする国の制度がNISA・iDeCoです。複利の器として最初に検討すべき制度なので、NISAとiDeCoの違いをあわせてどうぞ。
敵に回すとどうなるか:年18%の複利
ここまでの計算は、借金ではそのまま逆向きに作用します。キャッシングやリボ払いの年15〜18%という金利に72の法則を当てはめると:
手元に余裕資金ができたとき、「投資に回すか、リボ残高を返すか」で迷う必要はありません。年18%の借金を返すことは、年18%の確定利回りで運用するのと同じだからです。
複利を過信しないための注意点
複利の説明は魅力的なぶん、悪用もされやすい概念です。3点だけ釘を刺しておきます。
- 「年5%」は毎年確実に増える意味ではない:株式投資の利回りは年ごとに大きく上下し、マイナスの年もあります。シミュレーションの右肩上がりの曲線は「長期平均がそうなった場合」の姿です。
- 高利回りの約束は詐欺を疑う:「月利3%保証」(年利換算で40%超)のような話は、72の法則で検算すれば非現実的だと分かります。金融庁も無登録業者への注意喚起を行っています(金融庁:利用者への注意喚起)。
- 手数料も複利で効く:運用コスト(信託報酬)が年1%高いと、30年では利回り1%差と同じだけ最終額を削ります。複利は増える側だけでなく、引かれる側にも働きます。
よくある質問
Q. 72の法則とは何ですか?
A. 72÷金利(%)で、お金が2倍になるおおよその年数が分かる暗算法です。年4%なら約18年、年18%の借金なら約4年です。
Q. 複利の効果はどこで試算できますか?
A. 金融庁の「つみたてシミュレーター」で、積立額・利回り・期間を入れて無料で試算できます。
Q. 投資と借金返済、どちらを優先すべきですか?
A. 高金利(年15〜18%)の借金があるなら返済が先です。その金利を上回るリターンを投資で安定的に出すことは非現実的で、返済は確定利回りの「運用」と同じ効果があります。
まとめ
複利は「利息が利息を生む」だけのシンプルな数学で、①時間が長いほど加速度的に効く、②72÷金利で2倍になる年数が暗算できる、③積立と組み合わせると運用益が元本を超え得る、④借金では同じ力が逆向きに働く——この4点がすべてです。年5%を味方につけるか、年18%を敵に回すか。同じ数学のどちら側に立つかは、仕組みを知っているかどうかで決まります。
複利の器として国が用意した非課税制度はNISAとiDeCo、敵に回した場合の実例はリボ払いとキャッシングの記事でどうぞ。
※本記事は一般的な仕組みの解説であり、特定の金融商品の推奨や投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。